胃のレントゲン検査でわかる萎縮性胃炎は胃がんの発生と深い関連がある(第54回日本消化器がん検診学会中国四国地方会で発表)
2023年12月21日
研究を行った部門:
一般財団法人淳風会健康管理センター
研究を発表した者:
内山 卓也(診療部放射線課・診療放射線技師)
学会発表情報
発表者 | 内山卓也、大角博久、中務篤、三好翔大、春間賢、吉原正治、井上和彦、市場俊雄、笹井貴子、木長健、萱嶋英三、内田純一(淳風会健康管理センター)、楠裕明淳風会健康管理センター倉敷)、久本信實(淳風会ロングライフホスピタル)、鎌田智有、村尾高久(川崎医科大学 健康管理学教室) |
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演題 | 「人間ドック胃X線検査発見胃癌のX線学的背景粘膜と臨床病理学的検討- 組織型別・形態別検討」 |
学会 | 第54回日本消化器がん検診学会中国四国地方会、徳島市、2023年11月25~26日 |
ポイント
- 早期胃がんでは、その大部分で胃のレントゲン検査により萎縮性胃炎※があることがわかりました。胃がんを早期に見つけるために、定期的な胃のレントゲン検査(または内視鏡検査)が有用です。
- 少数ですが、萎縮性胃炎のない人でも胃がんが発生することがあることがわかりました。こうした胃がんも見落とすことがないように注意して検査にあたります。
※萎縮性胃炎:胃の壁(粘膜)に長いこと炎症が生じて胃の粘膜が薄くなった状態で、胃のレントゲン検査で発見できます。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が原因となっていることが多く、この菌を除菌することで改善することがあります。
●背景:
胃X線画像で背景粘膜評価をすることで、胃癌リスク状態の判別ができ診断に有用であることを報告してきました。
今回、早期胃癌を組織型別、形態別に分け、背景粘膜をX線学的に検討しました。
●対象:
2012年1月~2022年5月までに淳風会の胃X線検査で発見され、事後評価が可能な早期胃癌55例。
●方法:
早期胃癌の組織型別(分化型・未分化型)、形態別(隆起型・陥凹型)に胃X線画像で背景粘膜評価を行いました。
背景粘膜評価はひだと粘膜模様の状態より正常、過形成性胃炎、萎縮性胃炎の3つに分類しました。
●結果:
組織型別検討:分化型30例、未分化型13例、他は不明。ひだの所見は分化型で消失が60.0%と多く、未分化型では過形成と減少がそれぞれ30.8%でした。
粘膜模様は微小化・無構造が分化型で93.3%、未分化型で69.2%であり、分化型で高い傾向でした。
背景粘膜評価分類はどちらも萎縮性胃炎が最も多く認められました。
●形態別検討:
陥凹型39例、隆起型16例。ひだの所見は消失が陥凹型で48.7%、隆起型で50.0%と多い結果でした。
粘膜模様は微小化・無構造が陥凹型で87.2%、隆起型で87.5%と最も多い結果でした。
背景粘膜評価分類はどちらも萎縮性胃炎が多く、両群間に有意差はありませんでした。
●結論:
組織型別、形態別に背景粘膜を検討した結果、いずれも萎縮性胃炎を背景に発生しており、改めて胃癌はピロリ菌感染と関連があることが分かりました。
一方、ピロリ未感染、非萎縮粘膜に発生した癌も発見され、今後増加するか注意が必要です。