研究活動・論文

若い人の大腸がんは増えている?それはなぜ?:日本人間ドック・予防医療学会誌と欧州消化器病週間(ドイツ)で発表

2025年12月15日

研究を行った部門:
一般財団法人 淳風会健康管理センター及び川崎医科大学総合医療センター

研究を発表した者:
笹井 貴子(淳風会健康管理センター)

学会発表情報

発表者 【当施設における若年者大腸腫瘍症例の臨床的検討. 日本人間ドック・予防医療学会誌 39: 455-460, 2024】
1) 笹井 貴子、吉原 正治、春間 賢、井上 和彦、間部 克裕、楠 裕明、市場 俊雄、大橋 敦子、遠藤 恵子、脇本 正明、久本 信實、鎌田 智有
【学会:2025年欧州消化器病週間、ドイツ・ベルリン、2025年10月4日】
2) 笹井貴子1、吉原正治1、春間賢1,2、井上和彦1、湯本英一朗1、川上憲人1、佐藤元紀3、楠裕明3、久本信實4、村尾高久5、鎌田智有5、眞部紀明6
1. 一般財団法人淳風会健康管理センター 2. 川崎医科大学総合医療センター総合内科学2
3. 一般財団法人淳風会健康管理センター倉敷 4. 一般財団法人淳風会 淳風会ロングライフホスピタル 5. 川崎医科大学健康管理学 6. 川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)
演題 「若い人の大腸がんは増えている?それはなぜ?」
学会 日本人間ドック・予防医療学会誌 39: 455-460, 2024.
2025年欧州消化器病週間、ドイツ・ベルリン、2025年10月4日

ポイント

  • 当施設の大腸内視鏡検査(CS)で、40歳以下の若い人の大腸腫瘍の発見頻度は11.68%(大腸癌1.08%)で、顕著に増加傾向が見られました。
  • 大腸腫瘍の危険因子は大腸癌の家族歴、肥満(BMI 30以上)、高血圧、アルコール摂取、喫煙でした。 若年者であっても、リスクを有する受診者に積極的に検査を受けていただくことで、効率的に大腸腫瘍を発見できる可能性があります。

発表内容

日本の大腸癌患者数と死亡率は欧米諸国と比較し高い水準にあります。欧米では内視鏡検診の普及により中高年の大腸癌は減少しているものの、若年者での増加が問題視されています。今回我々は、当施設における若年者大腸癌の傾向と危険因子について、臨床的検討を行いました。

2012年5月から2024年7月の期間に、便潜血陽性を指摘され当施設で大腸内視鏡検査を受けた40歳以下の男女2,595名のうち、303名(11.68%)に大腸腫瘍(大腸腺腫、大腸癌)が発見されました。大腸癌は28名(1.08%)でした。腫瘍の63.7%は単発性で、69.6%(癌の89.3%)は左側結腸に存在していました。腫瘍の発見頻度を前期群(2012-2017年)と後期群(2018-2024年)で比較すると、男性では2%から20%、女性では1%から16%に顕著に増加していました。

大腸腫瘍の危険因子として、大腸癌の家族歴、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症、アルコール摂取、喫煙、運動習慣につき関連を検討しました。その結果、大腸癌の家族歴、肥満(BMI 30以上)、高血圧、アルコール摂取、喫煙が危険因子と考えられました。

本検討で、日本でも40歳以下の若年者の大腸腫瘍発見頻度が増加していることが示されました。現在40歳以上を対象としている大腸がん検診(便潜血検査)において、若年者に対しても大腸癌の家族歴、肥満、高血圧、アルコール摂取、喫煙といった危険因子を組み合わせたより効率的ながん検診の体制づくりが急務であると思われます。

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